リーダーシップ往復書簡 033

リーダーシップ往復書簡 033

 

 

前回に引き続き、リーダーが理解し身に着けるべきインテリジェンスについてご紹介したいと思います。

情報は、組織図で言うと、低いところから高いところへ流れるという特性があります。

もっと正確に言うと、実は役職はあまり関係なく、高い地位によるパワーを有していたり優れたリーダーシップがあったり、とにかく「力があると思われている有力者」に向かって情報が流れます。

私は今までM&Aで経営権が交代する前後のやりとりを幾度となく見てきていますが、このタイミングでは、今まで前の経営者に流れていた重要情報が新しい経営者に流れはじめる一方、前の経営者には重要情報が届かなくなるようなことはしばしばあることです。

また、例えば「力があると思われている有力者」の会社における地位が顧問であったとしても、取締役よりも情報を持っているという場合もよくあることかと思います。

このような特性のある情報ですが、リーダーはどのように収集すればよいでしょうか?

組織の公式のレポートライン以外にも、非公式の情報に価値があるのは言うまでもありません。

しっかりと組織が構築されている会社であれば、大半の情報はレポートラインに乗りますが、例えば上司に対する忖度などはこれらには表立っては反映されませんので、リーダーは非公式情報を取得して、行間を読む必要があります。

そして、やはりリーダーたるもの、積極的に、現場の情報を取りにいかなければなりません。

前回のとおり、情報は、その情報が事実(ファクト)なのか、それとも、その情報には誰かの評価・分析まで含まれているものなのかを分けて考えなければなりません。

現場から情報が上がってくる過程で、上司によって、一言添えられていたり、下手をすれば加工されていたりすることも多く、情報の多くは既に誰かのバイアスがかかっているわけです。

情報収集の過程で、評価を加えた人間の特性、人間関係や置かれている状況などを考慮して、リーダーは情報分析する必要があります。

リーダーが現場に出向いて情報を取得する価値は、レポートされて来るよりはるかに多くの情報量を取得することができること、そして、このようにチェックが入ることを周囲に知らしめることによって、何より恣意的に歪んだ情報を報告できないとフォロワーに示すことにあります。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

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【Q.33】
ここ何回かに渡り、リーダーのインテリジェンスの重要性を説かれていますが、具体的なエピソードを教えてください。

 

<コメント>

私は、正しくリーダーシップを発揮するうえで、インテリジェンス・スキルは不可欠だと思っています。

繰り返し紹介しますが、「人は性善なれど弱し」です。

分かりやすい例え話ですが、部下がミスをした場合、報告そのものが上がってこなかったり、虚偽の報告が上がってきたりするのです。

リーダーとは、暗闇の中、集団の先頭で、たいまつを持って、フォロワーを率いて進む存在です。

このたった一人のフォロワーの弱さで、集団全体・組織全体が危機に陥ることすらあるのです。

そのため、リーダーは正しく情報分析をする必要があるのです。

私が若かりし頃、企業再生に従事していて、赤字である事実を隠していた社長を見たことがあります。自分が「名経営者」でいたいがために情報を隠していたのです。

その会社の経営危機に際して、私は乗り込んで企業再生をすることになるのですが、その社長は、まさに虚像の人であって、本当に弱い人でした。

ただ外からは自己ブランディングに長けていたので、優秀な人のように見えていました。当該会社に関与するようになってから、すぐに会社の財務情報を紐解いて、幹部社員にヒヤリングをして、実像が見えてきたわけです。

また、最近でも、自己ブランディングに熱心なベンチャー経営者などのSNS投稿を見ていると、その人が思っている以上に、現在の精神状態が透けて見えてしまっている場合もあります。

SNS上で、一見、正論を主張しているようでありながら、それは自身の不安の裏返しであるなど、会社の内情とSNS情報を組み合わせることで見えてくることがあります。

リーダーが熱心にステークホルダーにかかる情報分析をしていれば、こういった人の弱さを感じ取り、職業的懐疑心を持って早期に行動することで、素早く問題解決に当たることができると思います。

 

※この記事は、2020年5月23日付Facebook投稿を転載したものです。

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