リーダーシップ往復書簡 079

リーダーシップ往復書簡 079

 

 

本連載を続けてお読みいたいだいている方からすれば、もはや当たり前のことかもしれませんが、社長という地位に就いたからといって、部下に慕われ、影響力で人を動かすことができるリーダーになれるわけではありません。職位と真のリーダーは別物です。

今回ご縁あって、一般社団法人日本プロ経営者協会のオンライン無料ウェビナーで、2021年4月6日19時から「中小・中堅企業で求められるプロ経営者のリーダーシップ~人を動かす本当の影響力」というタイトルでお話させていただくことになりました。

同団体は、多くのプロ経営者が生まれ、活躍するためのエコシステムを創出し、活力あふれる日本にすることを目指し活動されています。他方で、私が2014年に創業した株式会社スーツはプロ経営者をキーワードとして、時価総額100億円以下となる中小・中堅企業やベンチャー企業のバリューアップをしています。今回、同団体の掲げる目標と理事の方々が展開しようとしていることに共感してセミナー講師役をお受けすることにしました。

これはスーツ社でよく話をしているのですが、中小企業庁が発表する中小企業白書によれば、日本の企業数のうち大企業は0.3%、中小企業は99.7%。従業者数は大企業は約30%、中小企業は70%。それにもかかわらず、付加価値額は大企業が47%に対し、中小企業は53%しかありません。つまりは、中小企業の生産性が著しく低いのが日本の問題点です。これは私は中小企業の経営者の問題だと捉えています。

このような状況下において、中小企業の事業承継、特に後継者不足の問題が噴出しています。

そこに、社会的にも、プロ経営者が求められている背景があると思います。

もしかすると多くの読者の方は、プロ経営者というと、海外MBAを取得して、その後、大企業の経営幹部になられたキャリアの大企業でのプロ経営者を思い浮かべるかもしれません。しかし、今、日本社会で求められているのは、中小・中堅企業の事業承継を行った後のバリューアップや、それこそロールアップ(=同業のM&Aで規模拡大)できるプロ経営者なのです(他にも、新規事業の創出をして、中小・中堅企業やベンチャー企業を大企業にできるプロ経営者)。従来のプロ経営者の定義を広げなければ、この社会課題の解決ができないのです。

冒頭の話に戻します。今後、大企業の管理職や戦略コンサル、投資銀行家など経営全般の知識を備えた素晴らしいキャリアの方が、プロ経営者として中小・中堅企業のバリューアップに従事すると思いますが、いきなり社長になったとしても、大企業と違って、特に中小・中堅企業は組織がしっかりしていませんので、人を動かせません。

私は15年近くこのマーケットで経営者をしていますし、20代の時から自身で株式を所有せずに、「落下傘部隊」として乗り込んで経営という経験を多く積んできています。

当日は、実体験に基づいた経験・ノウハウをお話できればと考えております。問題解決の鍵になるのは、もちろん本連載でもおなじみのリーダーシップです。ご興味ある方はぜひともご参加ください。

 

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【Q.79】
事業承継のように創業者など前任者からバトンを受けた経営者は、どのようにリーダーシップを発揮すれば良いのでしょうか?

 

<コメント>

リーダーシップの考え方では、社会や組織における地位や立場は一切関係ありません。そのため、基本的には、立場が変われど、リーダーシップの正しい発揮の仕方は変わりません。

しかし、その方が、職位だけでなく、本当の意味で追従してくれるフォロワーがいるリーダーになるにあたって、様々な場面分けができるのも事実かと思います。その一つが今回のご質問の事業承継です。

事業承継の場合は、前任者のリーダーやフォロワーの夢や想いを引き継ぐということに、後任のリーダーは意識する必要があります。

事業承継の場合は企業再生とは違い、事業そのものが上手くいかなくなっているわけではありません。会社は売上・利益をしっかりと計上し、そこで働いているスタッフも充実した日々を送っている。しかし、前任の経営者の年齢が高齢化して後任が必要という状況が多いと思います。

このような状況下において、やみくもに前任者を否定することがリーダーシップではありません。

前提として、後任の経営者は、創業者や前任の経営者の夢や想い、そこで働くスタッフの夢や想いをよく理解してから経営者に立候補すべきでしょう。

事業承継の案件で、代替わり後に経営成績が落ち込んだり組織がゴタゴタしたりする場合は、突き詰めて言えば、後任の経営者が社長という地位に就きたい人であって、本当の意味で、そこのリーダーになりたい人ではない場合に多いように思います。

事業承継におけるリーダーシップでは、その会社のスタッフや歴史に対するリスペクトが不可欠だと思います。例えば創業期の苦労であったりサービスや商品に対するスタッフの想いであったり、フォロワーは尊重して欲しいと思っているでしょうし、それを理解できる人が新しい旗振り役となるべきでしょう。

そして、ただ単に前任者を否定するのではなく、フォロワーとともに追いかけている夢や目標から逆算して、現状の不足を指摘し現状を否定し、共に未来志向で努力することが求められています。

事業承継により新体制になったら、まずは自分の指示や発言が地位に基づく権限(パワー)に依拠していないかをよくよく確認して臨むべきだと思います。フォロワーからの信頼がなくなるのはあっという間です。

新しいリーダーは、今までのフォロワーの信頼を勝ち得て、職位だけでなく本当のリーダーになることを目指すべきだと思います。

 

※この記事は、2021年4月3日付Facebook投稿を転載したものです。

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